こんにちは。歯科医師の小場です。
食べ物を美味しく召し上がるために、大切な役目を果たしている「味覚」。
味覚の器官がなにかしらの原因によって弱ってしまうと、食べ物の味に対する感受性が低下し「味付けが薄く感じてしまう」「なんの味がわからない」といった味覚に関しての支障が出ることを「味覚障害」と呼びます。
新型コロナウイルス感染症の自覚症状の1つとしても話題になった味覚障害。もちろん新型コロナウイルスに罹患していなくとも、味覚異常が出ることもあります。
今回は「味覚症状」について、どのような要因があって味覚が働きにくくなってしまったのか?という原因論について深掘りしていきます。
味覚障害|6つの原因
食べ物の味を感じる器官は「味蕾(みらい)」という、舌の表面にある味を感じる細胞が、舌や舌の付け根、軟口蓋などに分布されています。
味蕾は、いわゆる味覚センサーの働きがあるのですが、主に以下の5つの原因によって味覚障害を誘発します。
①加齢
味覚障害の患者さんは、65歳以上が約半数近くを占めているほど、高齢者にとって身近な症状。
味蕾は、加齢とともに働きが弱まりやすく、高齢者になると1/2から1/3あたりまで味蕾の数が減少するともいわれています。
歳を追うごとに味付けが濃くなっている自覚があるという方は、味覚障害が1つの原因となっているのかもしれませんね。
②鉄分や亜鉛などビタミンが不足している
一方で、若い方に多くあるのは偏った食事で味覚障害を招くケース。
味蕾は短いスパンで新陳代謝を繰り返して細胞を生まれ変わらせるのですが、ここで新陳代謝を促す亜鉛が不足すると、味覚に異常をきたすことも。
また、鉄分不足で鉄欠乏性貧血にかかると、舌表面が赤くツルッとした感じになり、味蕾が働きにくくなる場合もあります。
③糖尿病などの全身疾患
糖尿病をはじめとする慢性腎不全や内分泌機能の低下など、全身疾患が引き金となって味覚障害が出るケースもあります。
糖尿病については神経や血管が阻害されるため、糖尿病患者概ね4分の1に味覚障害があるという報告も出ています。
④唾液量の低下
ストレスなどの心因性やシェーグレン症候群・ドライマウスなどが原因で唾液の分泌量が減ると、食べ物の物質が溶け出しにくくなり、味蕾の働きが弱まります。
⑤風邪
味覚と嗅覚は密接に関連しており、風邪を引いてしまうと嗅覚が低下して味を感じにくくなります。風邪による味覚障害は一過性の症状と捉えられており、多くの場合は自然に治癒します。
しかし、風邪に罹患したあとに起こった味覚異常・障害については治癒しにくいケースも。症状が続くようならば一度かかりつけ医に相談してみましょう。
⑥舌の炎症症状
熱い食べ物によって火傷をしてしまったり、入れ歯の傷などによって舌に炎症を起こしてしまったりすると、味の見分けが付きにくくなる可能性があります。